今日は、残業代請求の際の証拠となるタイムカードについてお話します。
ご相談の際によく、
「タイムカードがないのですが、残業代を請求できますか?」
というご質問を受けますが,
もちろん請求はできますし,
回収できるケースも多々あります。
確かに、タイムカードには、
始業時間と終業時間が正確に記載されているので、
残業代を請求するうえでかなり強力な証拠となり、
会社と交渉をするうえでも、労働審判や訴訟を申し立てるうえでも、
また、労働基準監督署(労基)への申告や刑事告訴(告発)のためにも、
非常に重要な証拠となります。
タイムカードがある場合、
特にお手元に過去2年分のタイムカードやその写しがある場合には、
きちんと保管しておいてください。
また、タイムカードがお手元にない場合には、
会社に開示を申請してみるのも一つの手段です。
開示された場合、きちんとその写し等を保管しておいてください。
タイムカードがお手元になく、
会社が保管しているにもかかわらず、会社が開示に応じない場合には、
弁護士が依頼を受けてから、会社に対して、開示を請求していくことになるでしょう。
会社によって、弁護士による開示請求でも、
それに応じる会社もあれば、応じない会社もありますが、
労働審判等になれば、裁判所の命令により開示を求められます。
また、タイムカードはあるが、上司等の命令で、まだ働いているのに早い時間でタイムカードを切られてしまうブラック企業もあるようです。
このような場合は、自分で正確な始業時間と終業時間を記録するとともに、
他の証拠によりその信用性を基礎付けるしかないでしょう。
このような場合については、タイムカードがない場合に等しいので、
また次回以降に詳しくご説明することにします。
会社側としては、
労働基準法や厚生労働省等が示す基準により、
従業員の労働時間の適正な把握のために、適切な措置を講じる義務があります。
従業員側としても、
タイムカードがない場合、
タイムカード等で始業時間、終業時間等が管理されていない場合、
タイムカードを上司の指示等で真実と異なる時間に切らされている場合などには、
会社に対して、適切な労働時間の管理を要求すべきでしょう。
また、その要求が難しく、会社の体質が変わらないブラック企業の場合には、
自分で始業時間、終業時間を(手帳、ノート、メモ、エクセルデータ等に)記録しておくべきでしょう。
そのうえで、当該始業時間、終業時間が間違えないことにつき、
毎日、会社のパソコンからメールを送信する、
会社のパソコンのログを取っておくなどして、
自分で管理した就業時間が正確なものであることを基礎づける必要があるでしょう。
以上、タイムカードは、確かに残業代を請求するうえで、重要な証拠ですが、
タイムカードがない場合にも残業代請求が可能な場合がありますので、
そのような場合でも一度ご相談いただければ幸いです。
伊倉総合法律事務所
弁護士 伊倉 吉宣