今回は,
早出残業(早出出勤)
について弁護士としてご説明致します。
当職は,普段分かりやすさを重視して,
「未払い残業代請求」と表現していますが,
正確には,
「時間外,深夜,休日労働に対する割増賃金請求」であり,
この「時間外」に関しては,
いわゆる残業,つまり通常の始業時間に出社し,
通常の退社時間まで仕事をしたが終わらず,
その後も残って仕事をする居残り残業だけでなく,
通常の出社時間よりも前に出社して業務を行う
早出残業(早出出勤)も含まれています。
従業員によっては,
通常の時間では仕事が終わらず,
残業を余儀なくされるのと同じように,
開店準備などのために始業時間よりも早く出社しなければならない
という方もいると思います。
このような早出残業(早出出勤)についても
居残り残業と同様に,
割増賃金(残業代)が発生するのかが問題となります。
会社側からすれば,
どのような場合に早出残業(早出出勤)につき,
割増賃金(残業代)を支払われなければならないのか。
従業員側からすれば,
どのような場合に早出残業(早出出勤)につき,
割増賃金(残業代)を請求できるのかという問題です。
早出残業(早出出勤)も労働時間と評価され,
居残り残業と同様に,割増賃金(残業代)が発生するポイントとしては,
当該早出残業(早出出勤)によって遂行する業務の時間が,
会社側の指揮監督の下で業務に従事している時間といえるかどうかです。
したがって,
会社が当該従業員に個別に指示したり,
就業規則等により,会社側の指揮監督の下で,
始業前に一定の業務を行うことが明確に定められている場合には,
当該早出残業(早出出勤)も労働時間と評価され,
割増賃金(残業代)が発生します。
また,上記のように,
会社側からの明示的な指示,命令がなかったとしても,
実際に早出残業(早出出勤)を行わなければ,
会社側から不利益を受けるような場合には,
黙示の命令があったものと評価され,
当該早出残業(早出出勤)の時間が労働時間と評価され,
割増賃金(残業代)が発生する可能性があります。
さらに,
始業時間後の業務と附帯して通常必要とされる準備行為にかかる時間は,
労働時間と評価され,割増賃金(残業代)が発生する可能性があります。
例えば,
始業後の実作業をするために必要な,
機械点検や店舗開店作業,交代引き継ぎ業務等は,
会社側から直接明示的,黙示的な指示を受けなくても,
始業時間後の業務と附帯して通常必要とされる準備行為にかかる時間として,
割増賃金(残業代)が発生する可能性があります。
また,
朝礼,ミーティング,準備体操,掃除等については,
通常必要とされる準備行為とはいえない場合が多いと考えられます。
ですので,
会社側から明示又は黙示の指示がある場合のみ,
労働時間と評価され,
割増賃金(残業代)が発生する可能性があります。
またよく問題となるのが,
作業服,制服への着替え等の時間です。
これも業務の性質上,
義務的で,しかも一定程度の作業を要する場合には,
労働時間と評価され,
割増賃金(残業代)が発生する可能性があります。
裁判例でも,
作業服への着替えが義務的な場合に,
その着替え時間を労働時間と評価しながら,
更衣所への移動時間や休憩中の作業服の脱着時間に関しては,
指揮監督下にある時間とはいえないとして,
労働時間とは評価しなかったものもあります。
以上のとおり,
早出残業(早出出勤)
に関して割増賃金(残業代)が発生するかどうかについては,
各会社の実情や,
各従業員の始業後の業務内容,
実際に始業前に行う作業の内容等によって
結論が異なります。
会社側としては,
就業規則,労働管理規程等を整備するとともに,
従業員に各社内規程を周知させ,
また,各従業員の業務内容や,
必要な始業前作業の内容,それにかかる時間等
を把握しておき,適切な賃金を支払う必要があります。
他方で,従業員側も,
社内規程の内容を把握するとともに,
割増賃金(残業代)が支給されるべき早出残業(早出出勤)を行っている場合には,
きちんと正当な割増賃金(残業代)を
請求していくべきであると考えられます。
いずれにしても,専門的な部分ですので,
弊事務所のように未払い残業代請求につき無料相談を実施している弁護士事務所に,
ご相談されることをおすすめいたします。
弁護士 伊倉 吉宣
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