残業代請求についても,
現在多数のご依頼をいただいておりますが,
それと合わせて,最近増えてきているご相談の一つに,
契約社員に対する「雇止め」の問題があります。
「雇止め」とは,
企業が,契約社員やパートタイマー社員等、有期雇用契約で雇っている労働者を,
契約期間満了時に契約更新を行わず,契約を終了させることをいいます。
今日の日本においては,雇用の流動化が進み,
従前の終身雇用制度は変化をみせはじめ,
契約社員として会社と雇用関係を結ぶ従業員の方も増えてきており,
現に契約社員の方からのご相談に乗る機会も増えてきました。
特によくご相談を受けるのが,
「契約期間が満了したとして契約を打ち切られてしまったのですが,
やはり辞めないといけないのでしょうか」
といった雇止めに関するご相談です。
今回は,このような契約社員の方の更新拒絶の問題(雇止め)についてお話しましょう。
まず,解雇と雇止めの違いからご説明致します。
解雇というのは,
期間の定めのない雇用契約を会社と締結した社員(いわゆる正社員)が
会社から一方的に辞めさせられることです。
解雇に関しては,
立場が弱い労働者保護の観点から,
永続的に雇用されるという労働者の合理的期待は保護するために,
就業規則の解釈や,解雇権濫用法理等により,
一般的に「会社が従業員を解雇するのは難しい」と言われています。
他方で,雇止めというのは,
期間の定めのある雇用契約を会社と締結した社員(いわゆる契約社員等)が
会社から契約更新を拒絶されることです。
この場合,解雇権濫用法理等を適用することはできません。
解雇権濫用法理は,あくまで正社員等,期間の定めのない雇用契約を,
一方的に解消することは許されないという理念に基づく法理だからです。
また,期間の定めのある雇用契約の場合,
会社側からすれば,当然いつでも契約の更新を拒絶できるからこそ,
そのような契約形態を採っているという会社も多いでしょう。
では,会社は自由に契約社員の契約更新を拒絶できるのでしょうか。
例えば,契約上は1年間の契約であっても,
契約締結時に「確かに1年の契約だが基本的に毎年更新するつもりだ」といったような説明を受け,
何年も特に何事もなく更新され続けてきたとしたら,
その契約社員は,
この先もずっと更新の連続により雇用され続けるという期待を抱くでしょう。
この期待も,正社員同様に保護する必要があるはずです。
この問題に対して,
判例は,解雇権濫用法理を類推適用するという形で,
更新の永続性を期待した契約社員等を保護してきましたが,
現在では,労働契約法により,法律で明確に保護されるに至りました。
雇止めが違法とされ,当該契約が更新されるのは以下の場合です(労働契約法19条)。
① 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって,
その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより
当該有期労働契約を終了させることが,
期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより
当該期間の定めのない労働契約を終了させることと
社会通念上同視できると認められる場合
または
② 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に
当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて
合理的な理由があるものであると認められること
ちょっと分かりにくいかもしれませんが,
契約書の内容として契約社員となっていたとしても,
仕事内容が正社員と変わらず,何年も更新され続けてきたような場合や,
契約時に基本的には毎年更新すると言われ,
その後の更新手続きも有って無いようなものだった場合などには,
会社側から更新を拒絶されたとしても,
同一条件で更新されたものとみなされると規定されています。
雇止めの違法性は,
実際には,他の周辺事情も含めて総合的に判断されるものですので,
個別の事案に即して,詳細な事情を聞いた上で対応を検討することになりますが,
いずれにせよ,契約社員だからといって諦めるのではなく,
少しでも納得いかない事情があるのであれば,
会社側に更新の主張をされるべきだと考えます。
逆に会社側からすれば,
契約社員だからといって安心するのではなく,
当該社員に対する説明や対応等から注意し,
後で対抗できるような準備(メールや書面で残す等)をしておく必要があると考えます。
また,解雇の場合には,
解雇予告通知や解雇予告手当という制度が,
労働基準法に定められていますが,
雇い止めの際に,
会社側は同じような手当をする必要はないのでしょうか。
まず,解雇予告手当という制度はありませんが,
厚生労働省による告示とそれに伴う通達によれば,
1年を超えて継続勤務しているか,
1年以内でも3回以上更新している有期労働契約を
使用者が更新しない場合,
労働者に対して30日前までにその予告をする必要があり,
不更新の予告後に労働者がその理由の証明書を請求したとき,
また不更新後に労働者がその理由の証明書を請求したときは
遅滞なく証明書を交付しなければならず,
かつその理由は
「契約期間の満了とは別の理由を明示することを要する」
とされています。
つまり,会社側からすれば,
予告手当という制度はないものの,
雇止めの場合も30日前に予告しなければならず,
それに違反した場合には,
当該雇止め自体が違法・無効となる可能性が高い
ということになります。
伊倉 吉宣
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